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日本の未来を考える

第2回 なぜスイスがプライベートのトップなのか?

4コマ イメージ
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島 耕作(しま こうさく)
前回ヨーロッパのプライベートバンクについてお話をお聞きしました。
富裕層の歴史ある考え、興味深かったです。
今回はその中でも“なぜスイスがトップなのか”を詳しくお聞きしたい。
改めて篠田会長、よろしくお願いします。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
スイスがプライベートバンクの聖地と呼ばれるには理由があります。詳しくお話していきましょう。
篠田 丈 (しのだ たけし)
プライベートバンクのルーツ
島 耕作(しま こうさく)
率直にお聞きしますが、プライベートバンクが生まれたのはスイスですよね?

プライベートバンクの発祥は、スイスと言われています。
11世紀の十字軍まで遡るという説もありますね。

スイスのプライベートバンクにもルーツは2つあります。
それが「ジュネーブ系」と「チューリッヒ系」です。

篠田 丈 (しのだ たけし)
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これ以外にもオーストリアやリヒテンシュタインなど、地域によってプライベートバンクの成り立ちは違います。

いずれにせよ、何百年という歳月をかけて資産を守り、増やしてきた伝統があるのです。

篠田 丈 (しのだ たけし)
スイスは永世中立国である
島 耕作(しま こうさく)
発祥地=聖地ではないですよね?
「永世中立国」という立場はやはり大きいのでしょうか?

スイスが「永世中立国」として知られている事実は、スイスのプライベートバンク業界の発展に直接的な因果関係はありません。

ですが、顧客側から考えれば無関係とは言えませんね。

篠田 丈 (しのだ たけし)
ご存知かと思いますが、まずこの話は1815年のウィーン議定書にまで遡ります。
この議定書により、スイスは国際紛争や戦争から距離を置く中立国としての地位を確立しました。
これはスイスが政治的な不安定性から遠ざけられることを意味します。
篠田 丈 (しのだ たけし)
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ウィーン議定書とは

1815年にオーストリアのウィーンで開催された国際会議で合意された重要な文書です。この議定書は、ナポレオン戦争後のヨーロッパにおける新しい秩序を確立し、各国の緊張や国際関係を整理するのために作られました。
簡単に言えば、ウィーン議定書は「戦いのルールブック」であり、ヨーロッパ諸国が戦争の後にどの国がどの地域を支配し、どの国が友好的な関係を築くかを決めるための取り決めです。

島 耕作(しま こうさく)
「有事の金」というくらいですから、金と政治と戦争は関係性が深い。
中立国に安心する気持ちはとてもよくわかります。

そうですね。
スイスは武力紛争に巻き込まれず、その地理的位置と中立性が、多くの国々や個人にとって安全な避難所としてのスイスを確立しました。

ヨーロッパの富裕層然り、国際的な投資家も、政治的な不安定性から資産を保護するため、中立国に頼ることが多いです。
スイスは中立国としての信頼性が高さはメリットとなりますね。
篠田 丈 (しのだ たけし)
地図イメージ
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金融プライバシーを保護する法律
島 耕作(しま こうさく)
それでも、プライベートバンクの聖地となる直接の要因ではないんですね。
関係が深いのはむしろ「銀行法」の方でしょうか?

島さんは法学部のご出身でしたね。
そうです。まさしく銀行法はそのひとつでしょう。

それも含め私は、“なぜスイスがプライベートのトップなのか”という答えは3つあると考えています。
篠田 丈 (しのだ たけし)
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一番大きい要因となる金融プライバシーの保護が、今おっしゃった法律に関すること。スイスは、個人の金融情報を守るために独自の法律と規制を備えています。

まず1934年に制定された「スイス銀行法(銀行法)」により、銀行は顧客の金融情報を外部に漏らすことが禁止されています。そして1992年に、個人のプライバシーを保護するためにデータ保護法が制定され、金融情報はさらに慎重に扱われるようになりました。
篠田 丈 (しのだ たけし)
島 耕作(しま こうさく)
そうか、データ保護法も制定されましたね。
銀行秘密の概念だけでなく、プライバシーの保護に関する意識が高そうだ。
大きな柱となるのが「スイス銀行法」「データ保護法」ですね。

法制化されたのは今述べた通り20世紀に入ってからですが、実際にはプライベートバンクの発祥当時からの文化なんですよ。

実はスイスの銀行法は、その理念は厳しいのですが、実務的には他の国に比べると自由度が高く、行政指導も銀行の自由度の高さを尊重しています。
これは日本の金融庁と金融機関との関係とは正反対です。

これがスイスプライベートバンクのサービスの高さ(自由度と柔軟性)に繋がっています。行政がビジネスに介入すると良いサービスは出来ません。
篠田 丈 (しのだ たけし)
アアイコン スイス銀行法(Swiss Banking Act)

スイスにおける銀行業界全般を規制し監督する法律です。この法律は、銀行の運営、組織、ディレクター、および取引に関する規則を定めています。この法律は金融システムの安定性を確保し、銀行業務の信頼性を高めるために制定されました。
また、銀行の顧客の金融情報の秘密を守るための法の基盤となっています。スイス銀行法は銀行業界全体に適用され、金融機関が顧客のプライバシーを守るための重要な要素です。

制定年月日: 1934年11月8日 (最新の改訂は2015年)
ソース: Swiss Banking Act (1934)
https://www.admin.ch/opc/en/classified-compilation/19340083/index.html

アアイコン データ保護に関する連邦法(Swiss Federal Act on Data Protection)

この法律は個人のデータプライバシーを保護するために制定されました。金融機関を含む組織は、顧客のデータを慎重に取り扱う責任を負っており、外部に漏れないように厳格に管理されています。これは金融業界におけるプライバシー保護にも適用され、銀行は顧客の金融情報を慎重に取り扱う必要があります。

制定年月日: 1992年6月19日
ソース: Swiss Federal Act on Data Protection (1992)
https://www.admin.ch/opc/en/classified-compilation/19920153/index.html

長期投資の文化とそれを支える無限責任パートナー制度

そして、スイスのプライベートバンクが自ら誇っているところとして、
1.歴史の長さ
2.変わらないサービスの質
3.単なる運用サービスではなく、顧客家族との繋がりの強さ
この3点をよく話題にします。

3についてはファミリーオフィス・サービスと言われることもあります。 その象徴と言えるのが「長期投資の文化とそれを支える無限責任パートナー制度」です。
篠田 丈 (しのだ たけし)
島 耕作(しま こうさく)
「長期投資の文化」は前回たくさん教えていただきましたね。
無限責任パートナー制度とは何でしょう…

スイスの伝統的なプライベートバンクにおいて主流の組織形態です。
発祥時からつい最近まで、プライベートバンクを保有しているファミリー(パートナー)が無限の責任を負って業務を保証してきています。
それは、言い換えれば決していい加減な経営が出来ないということです。

さらにプライベートバンクを保有しているファミリーが、自らの資産を自分のプライベートバンクで運用していることからも、慎重な運用・運営が行われています。当然無理な拡張・拡大はしません。
篠田 丈 (しのだ たけし)
アイコン 無限責任パートナー制度
一般的な企業の組織形態である株式会社では、株主は出資額の範囲内でしか責任を負いません。
しかし、無限責任パートナー制では、パートナーは無限責任を負うため、パートナーの資産も債務の担保となります。無責任な経営は必然的にできなくなります。
プライベートバンクの無限責任パートナー制は、以下のメリットデメリットがあります。
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島 耕作(しま こうさく)
まさに一蓮托生というわけか…
プライベートバンクのならではの結びつきですね。
現在では、BIS規制で議論された安全性基準、つまり自己資本比率の高さが、数値としてもはっきり出ています。これらが、大きな安心感となっています。
篠田 丈 (しのだ たけし)
※BIS規制:国際決済銀行(BIS)が金融機関の健全性と安定性を高めるために策定した国際的な金融規制
ちなみにBIS規制は、バーゼル銀行監督委員会の常設事務局が国際決済銀行(BIS)にあることから、金融業界で馴染みのある言い方なのですが、正確にはBISとバーゼル銀行監督委員会は別組織のため、「バーゼル規制」がより正しい呼称なんですよ。
篠田 丈 (しのだ たけし)
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「参照元:日本銀行HP」https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/pfsys/e24.htm

島 耕作(しま こうさく)

一般的にはあまりなじみのない言葉ですよね。
バーゼルは、ジュネーブ・チューリッヒに続く第三の都市として名前は知っていましたが、このように重要な常設事務局が置かれる場所とは…

自己資本比率が金融規制でも定められている、すごいことだと思います。
永世中立国に、法と制度と金融規制が整備されている。
これぞまさしくスイスがトップたる所以でしょうね。
篠田 丈 (しのだ たけし)

そして3つ目が二国間協定です。
スイスはEUに加盟することなく、各国と特別な関係を築いてきました。

スイスは多くの国と国際的な二国間協定を締結しています。これらの協定は、資産管理に関して二重資金を回避するために役立ちます。
スイスの銀行が顧客の国と協力し、税金を効果的に管理できるようになり、国際的な資産管理をサポートしています。

富裕層と国際的な投資家は、スイスの金融環境が資産を効果的に保護し、最適化するための理想的な場所であると考えています。
篠田 丈 (しのだ たけし)
島 耕作(しま こうさく)
スイスはかなり多くの国と二国間協定を締結していますよね。
私の認識では137か国だったかな。

はい、2023年9月20日現在、スイスは137の国と二国間協定を締結しています。
経済連携協定(EPA):11カ国
自由貿易協定(FTA):4カ国
租税条約:122カ国
合計すると、137カ国となります。

かなり大きな影響があることは間違いありません。
篠田 丈 (しのだ たけし)

子孫のために守るお金が、ヨーロッパの富裕層の資産の中核を成すお金です。

ファミリーで営む事業に適正な予算を回しながら、数百年先の一族の未来を見据えて資産管理をしてきます。無頓着なのではなく、大事だからこそ信頼できるプロを見定めて一任するんです。運用で重視するのも「増やす」より「価値を減らさないこと」ですが、求めるレベルは低くないですよ。

社会のためにお金を使うのも、結果として一族の価値を高めることに繋がります。

篠田 丈 (しのだ たけし)
島 耕作(しま こうさく)

二国という数の少なさは柔軟性が高いですし、双方のより納得できる協定になりますね。
ありがとうございます、勉強になりました。

篠田会長、次はさらに踏み込んで少しデリケートな部分をお聞きしてもいいですか?
もちろんです。
お客様のプライバシーを侵さない範囲でしたら、いくらでもお答えしましょう。
篠田 丈 (しのだ たけし)
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